漢字の五体（３１）　　　◆◇◆ＨＯＭＥにもどる

篆書展望（その２）
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　前回、篆書（てんしょ）とくに小篆（しようてん）以前として漢字の起源について展望しましたので、小篆成立後の書例をかいつまんで展望してみたいと思います。
　秦（しん）の始皇帝（しこうてい）によって前二二一年に統一された文字、つまり小篆は『泰山刻石（たいざんこくせき）』（前２１９）や『瑯琊台刻石（ろうやだいこくせき）』でその厳正な姿を見ることが出来ます。この他には、秦権（しんけん　秦の公器であるおもり）や秦量（しんりょう　はかり）の銘文〈ふつう権量銘（けんりょうのめい）と呼ばれますが、ほんらい権と量はべつもので区別されなければなりません。）に見ることが出来ますが、『泰山刻石』『瑯琊台刻石』にある縦２に対して横１．５というスマートな字姿とは異なるものです。解説書によってはこれを小篆とするものがありますが、やはり『泰山刻石』『瑯琊台刻石』を標準とすべきでしょう。ただし小篆は、その構造があまりにも厳格であったために一般化しなかったようで、秦における小篆の書例はごく少数です。
　さて小篆の書例は少ないのですが、始皇帝の文字統一の作業はこれ以後の文字構造を確定し、これが私たちが用いている楷書まで継承しているのですから、その重要性はきわめて認識すべきことでしょう。次の時代である漢は、隷書が使用書体の主流となり一般化します。小篆は、漢碑の題額に見られる程度です。『孔宙碑（こうちゅうひ）』（１７５）・『韓仁銘（かんじんのめい）』（１７５）・『張遷碑（ちようせんひ）』（１８６）などには立派な篆額（てんがく　篆書の題額）をもっています。
　次の時代である三国時代・南北朝時代は、立碑の禁令によって石碑の建立が出来なくなったことから、石碑の書例はごく少ないものです。この時のものに小篆の碑として『天発神讖識碑（てんぱつしんしひ）』（２７６）や『禅国山碑（ぜんこくさんひ）』（２７６）などがあります。とくに『天発神讖碑』は、小篆の文字構造に隷書の筆法を用いた特異なものです。
　次の時代である唐は、初期に欧陽詢（おうようじゅん）・虞世南（ぐせいなん）・褚遂良（ちょすいりょう）が活躍して楷書の美の極点をしめしますが、中期には李陽冰（りようひょう）が出て小篆を復活させました。のちに「二李（にり）」と称されて篆書の二大名人とされます。もう一人の李は李斯（りし）のことで、始皇帝の命によって小篆を揮毫した人物と伝えられますが確証はありません。李陽冰の小篆には『三墳記（さんぷんき）』（７６７）があります、また顔真卿（がんしんけい）による書の石碑に篆額をおおく書いています。李陽冰の小篆は、独特の円満な完成を見せたスタイルで玉箸篆（ぎょくちよてん　玉の箸で書いた小篆の意味）と呼ばれます．後世の人々は始皇帝の残した小篆よりも、玉箸篆を小篆の理想としました。清（しん）の�酸佛　覆箸Δ擦④犬隋砲狼嫺�申弌覆�磴�砲紊Δ悗い靴紊帖砲砲茲辰鴇�燭魎粟�気擦振眄佛匹料弔箸気譴訛臀餡箸任垢�△海�酸佛，眞翡�泙任篭免や燭鮟颪い討い泙靴拭�
　次の時代である宋は、国策として文化行政を充実させます。とくに書画の研究が進んで、青銅器にある古代文字にも及びました。こうした成果は、『宣和博古図（せんなはくこず）』や『歴代彝器款識叢例（れきだいいきかんしそうれい）』などで見ることができます。また一世紀の頃に活躍した許慎（きょしん）の『説文解字（せつもんかいじ）』（漢字九三五三字を形音義によって解説）を研究した徐鉉（じょげん）・徐鍇（じょかい）の兄弟がいます。徐鉉・徐鍇の研究成果は、『説文解字』研究の原点とされるものです。
　次の時代である元（げん）は、異民族である蒙古族の支配に漢民族が屈服した苦難の時代でした。趙孟頫（ちょうもうふ）は元一代を代表する書家ですが小篆も書いていて、また篆刻もしています。職人の手によらない文人自身による刻印は、趙孟頫に始まると言われています。
　次の時代である明（みん）は、趙孟頫によって再興された王羲之（おうぎし）書法を展開させて、ついには明末（みんまつ）ロマン派と呼ばれる人々が行草書に自在な表現をみせます。こうした中で篆書は陰が薄いのですが、篆刻では古印の印影を集めた『集古印譜（しゅうこいんぷ）』や名人の印影を載せた『学山堂印譜（がくさんどういんぷ）』などがつくられ、また何震（かしん）や蘇宣（そせん）といった印人が多数登場して活況を呈します。
　次の時代である清（しん）は、ふたたび異民族である満州族の支配となりますが、中華文化を奨励しました。実事求是（じつじきゅうぜ　事実によって真理をもとめること）を命題として考証学（こうしょうがく）がうまれ、さらに文字学（もじがく）が派生して古代文字に対する関心は一挙に国中の関心となりました。こうした状況は、文字を対象とする書にも直結して、その書表現の内容は古代文字へと向かい、ついには古代文字による書作は清の中期以後の主流となります。中期以後には、�酸佛　�簀係�覆舛腓Δ靴韻鵝法Ω眈酸戞覆瓦靴腓Δ擦①砲箸い辰申颪塙鎔�鬚茲�垢詭梢佑�真�仂譴靴燭海箸眛団��覆海箸任后�

初出／『拓美』４３１号（平成１３年１０月）
Ｗｅｂ版／平成１８年４月再編・加筆