�ｹ石如書作品における款印と使用時期の変遷について
（作品論）

遠藤昌弘


目次
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０．はじめに
１．�ｹ書における款印使用の特徴と可能性
２．�ｹ書における有紀年作品に見られる款印
３．�ｹ石如自用款印
４．�ｹ自用款印の使用時期について
５．�ｹ自用印の使用時期についての検討
６．結び
参考文献


０．はじめに
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　小稿『�ｹ石如（有紀年）作品目録』（『大東書道研究』７　大東文化大学書道研究書　１９９８　所収）において、�ｹの書法刻印について款文によって制作年配列を行なった。これによって書法７１件、刻印２３面を配列することができた。
　�ｹの書作品における款印は、従来より款印ごとに押印時期の変遷が検討され、無紀年作品の制作年代の推定また判定に、書風・運筆用筆、また款文内容・署名などと併せて有効な判断材料とされてきた。そこで本稿では、制作年の判明した書法７１件について�ｹの自用款印を調査し、現時点で判明している限り使用時期を明確にすることを試みた。
　図版頁の制作にあたっては、東京国立博物館ならびに株式会社二玄社、また収蔵者各位より貴重な資料の提供を頂きました。ここに記して深謝申し上げます。
　なお、提供して頂きました印影については―３．�ｹ石如自用款印―に詳記しました。


１．�ｹ書における款印使用の特徴と可能性
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　〈第一点・特徴１〉�ｹ書１件における款印使用は、複数印以上使用しているものを多見する。
　本稿で、検討した�ｹ書の有紀年作品５５件（立幅・対幅・四屏・六屏・八屏・十屏・横披・冊頁に係わらず１件とする。）中に限ってみても、款印１印使用は５件（9．1％）２印使用は１１件（20．0％）３印使用は２５件（45．5％）４印使用は８件（14．5％）５印使用は４件（7．3％）８印使用は２件（3．6％）であった。款印３印以上の使用は、全体の７割（70．9％）を占めるのである。こうした特徴は、�ｹ自身が書作家として知られるまえに篆刻の専家であったことが理由と考えられる。また�ｹ作品の制作年が判明している最初のものは３６歳の刻印であること�@。さらに伝記資料は、�ｹの父である一枝（号　木齋）から篆刻と隷書を学んだこと�A、�ｹが刻印の頒布によって生計を立てていたこと�Bが記されているもの裏付けとなろう。刻印の制作は没年前年の６２歳まで確認することができる�C。　�ｹ刻印の全体は、現在稿者が確認したものだけでも２０９面を数えた。本稿では自用款印は３３印を確認したが、刻印全体の一割強（15．8％）を占めることは、自用款印の多さを示している。

�@『�ｹ石如（有紀年）作品目録』参照。
�A「年譜」一五歳の記述（『�ｹ石如研究資料』穆孝天・許佳瓊　人民美術出版社　１９８８　所収）に拠る。
�B「完白山人傳」包世臣（『藝舟雙輯』　１８３０頃　所収）に拠る。
�C�@に同じ。

　〈第二点・特徴２〉�ｹ書において制作年が明記されているものを多見する。
　制作年が明記されている�ｹ書は７１件を確認した。制作年が明記されない無紀年の書作品は、現在稿者が確認したものだけでも５４件を数えた。総数１２５件のうち六割ほど（56．8％）が制作年が明記される有紀年の書作品である。
　第一点と第二点について、　―２．�ｹ書における有紀年作品に見られる款印―において検討した。

　〈第三点・可能性１〉第一点・第二点の理由から、�ｹ書において款印ごとに使用時期を確認することが可能である。―３．�ｹ自用款印の使用時期について―において検討した。

　〈第四点・可能性２〉第三点によって款印ごとの使用時期が判明すれば、�ｹ書において制作年が不明のものであっても款印によって使用時期を推定できる可能性がある。また第一点の特徴である複数印であれば使用時期の重なりを検討することで、更に使用時期を限定して推定できる可能性がある。
　なお第四点は、�ｹ書における制作年不明のものに対して制作年を推定するための多くの検討作業の一つであって、制作年の推定にあたっては、本文内容・款文内容をはじめ書風・運筆・用筆について、また使用書写材料、表装装幀の方法・形式・材料など可能なかぎりの検討作業が必要である。


２．�ｹ書における有紀年作品に見られる款印
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　『�ｹ石如（有紀年）作品』（前同）に挙げられた書法７１件中に新たに確認した資料２件（�ｂS０―１　�ｂT５―１）を加え、款印を確認できるものは５５件であった。これを制作年順に列記した。５５件の内容は、真蹟５０件と拓本５件である。
　５５件中の款印の総数は１７１印であった。このうち重複した款印を整理すると、自用款印は３３件であった。
　文中の作品�ｂﾍ『�ｹ石如（有紀年）作品』に従う。また款印§�ｂﾍ後述にて解説する。

　はじめて款印が確認できる書法は、３９歳の立幅篆書の２件と４０歳の立幅楷書の１件に始まる�@。これ以後五年間は空白である�A。　次いで４６歳の立幅隷書・立幅草書の２件が見られる。４７歳は１件、４８歳は四屏篆書・四屏四体書の２件、４９歳は四屏篆書の２件であった。４８歳・４９歳は大作を残している。
　５０歳は１件、５１歳は１件、５２歳は１件、５３歳は２件である。５４歳は嘉慶改元の年（１７９６）に当たる。この年の作例は見られない。５５歳は４件、５６歳は２件、５７歳は２件、５８歳は４件、５９歳は４件である。五十代は立幅・冊頁・対幅・横披が多い。５３歳に八屏隷書、５８歳に五屏篆書・八屏草書、５９歳に四屏四体書の大作がある。
　６０歳は６件、６１歳は３件、６２歳は１０件、６３歳は５件を数えた。６０歳に八屏隷書、６１歳に四屏隷書、６２歳に六屏篆書・八屏（拓本）篆書があるが、没年に当たる６３歳には十ケ月の間に六屏（拓本）篆書・六屏隷書・八屏（拓本）隷書・十屏隷書と大作が連続し、その旺盛な活力は驚くべきものがある。晩年の四年間は多作の年で、作例も多く内容ももっとも充実した時期である。

�@�ｹの書法刻印のうち、現在確認できる最初期のものは３６歳の刻印『太羹玄酒』『聊浮游以逍遥』（両面印）である。次いで３７歳の刻印５件がある。詳しくは『�ｹ石如（有紀年）作品』を参照願いたい。
�A�ｹ４１歳から４５歳までは、４１歳に刻印４件がある。また４４歳に篆書　臨『會稽刻石』、冊頁　隷書『司馬温公居家雜儀』二十條の書法二件があるが、款印のないものである。

３９歳（乾隆４６年、辛丑、１７８１年）
�ｂR９―１　立幅　篆書『周易』謙　「天道虧盈而……」
〈款印〉§１「�ｹ琰」
�ｂR９―２　立幅　篆書『周易』説卦傳　「昔者聖人之……」
〈款印〉§１「�ｹ琰」、§２「紫電青霜」

４０歳（乾隆４７年、壬寅、１７８２年）
�ｂS０―１　立幅　楷書『楚辭』九歌のうち東皇太一・雲中君�@　「吉日兮良辰……」�A
〈款文〉乾隆歳在壬寅、穐九月望後一日。古浣、�ｹ琰書。
〈書資１５〉
〈款印〉§５「�ｹ琰」、§３「石如」

�@『文選』騒類にも収められる。
�A本件は『定本書道全集』１３（河出書房　１９５６）『支那墨跡大成』８（国書刊行会　１９７４）『款識叢例』（省心書房　１９７９）に載せられる作品であるが、款印が不明のため『�ｹ石如（有紀年）作品』には採らなかった。今回、東京国立博物館資料館にて款印資料を確認したので追加した。作品は河井仙郎氏所蔵のもので、昭和二〇年（１９４５）戦災により焼失したと思われる。

４６歳（乾隆５３年、戊申、１７８８年）
�ｂS６―１　立幅　隷書　「歐陽永叔入……」
〈款印〉§４「古浣子」、§５「�ｹ琰」、§６「石如」
�ｂS６―２　立幅　草書　「飛甍複閣厭……」
〈款印〉§７「浮大白讀異書」、§８「�ｹ琰」、§９「石如」

４７歳（乾隆５４年、己酉、１７８９年）
�ｂS７―１　冊頁（一四頁）　行書　「和大觀亭西……」
〈款印〉§８「�ｹ琰」、§９「石如」

４８歳（乾隆５５年、庚戌、１７９０年）
�ｂS８―１　四屏　篆書『湛方生序』　「湛方生序曰……」
〈款印〉§８「�ｹ琰」、§９「石如」、§１０「�ｹ琰手摸魏晉以前金石文字之印」
�ｂS８―２　四屏　四体書（篆・隷・楷・行）
（第一幅）篆書　「周�s字巨勝……」
〈款印〉§１０「�ｹ琰手摸魏晉以前金石文字之印」
（第二幅）隷書　「劉慧斐字宣……」
〈款印〉§８「�ｹ琰」、§９「石如」、§１１「字叔華」
（第三幅）楷書　「周續之字道……」
〈款印〉§１０「�ｹ琰手摸魏晉以前金石文字之印」
（第四幅）行書　「祁嘉字孔賓……」
〈款印〉§８「�ｹ琰」、§９「石如」

４９歳（乾隆５６年、辛亥、１７９１年）
�ｂS９―１　四屏　篆書『程子四箴』　「程子四箴視……」
〈款印〉§１２「�ｹ琰」、§１３「石如」
�ｂS９―２　四屏　篆書　「南陔孝子相……」
〈款印〉§１２「�ｹ琰」、§１３「石如」

５０歳（乾隆５７年、壬子、１７９２年）
�ｂT０―１　立幅　隷書　「磯邊鵠去蘚……」
〈款印〉§１４「家在龍山鳳水」、§１２「�ｹ琰」、§１３「石如」
５１歳（乾隆５８年、癸丑、１７９３年）
�ｂT１―１　立幅　行草書　「到來忽評有……」
〈款印〉§１４「家在龍山鳳水」、§１２「�ｹ琰」、§１３「石如」
５２歳（乾隆５９年、甲寅、１７９４年）
�ｂT２―１　対幅七言　隷書　「萬華盛處松……」
〈款印〉§１４「家在龍山鳳水」、§１２「�ｹ琰」、§１３「石如」
５３歳（乾隆６０年、乙卯、１７９５年）
�ｂT３―１　立幅　草書　「江樓玉�z暗……」
〈款印〉§１４「家在龍山鳳水」、§１２「�ｹ琰」、§１３「石如」�ｂT３―２　八屏　隷書『周易』謙　「謙享君子有……」
〈款印〉§１２「�ｹ琰」、§１３「石如」、§１５「日々湖山日日春」

５５歳（嘉慶２年、丁巳、１７９７年）
�ｂT５―１　立幅　行草書　「懷抱屬不展……」�@
〈款文〉甲寅、秋日。登皖口任氏霄漢樓作。丁巳、春。鐵研山房荊花盛開。偶憶此詩、遂書之。完白山人、�ｹ石如。
〈款印〉§１５「日々湖山日日春」、§１３「石如」§１８「�ｹ氏完白」

�@本件は『�ｹ石如（有紀年）作品』に採られていない。今回、『定本書道全集』１３（河出書房　１９５６）『支那墨跡大成』８（国書刊行会　１９７４）で資料を確認したので追加した。

�ｂT５―２　冊頁（一二開）　四体書（篆・隷・楷・草）
篆書（三開）　「怪石長松嶒……」
〈款印〉§１５「日々湖山日日春」、§１６「�ｹ石如」
隷書（三開）　「少學琴書偶……」
〈款印〉§１４「家在龍山鳳水」、§１７「石如」
楷書（三開）　「雪齋清境發……」
〈款印〉§２０「鳳橋麟坂舊茅廬」、§１８「�ｹ氏完白」
草書（三開）　「擇故山濱水……」
〈款印〉§１９「笈遊道人」、§１３「石如」、§１８「�ｹ氏完白」�ｂT５―３　立幅　行草書　「清風江閣早……」
〈款印〉§１４「家在龍山鳳水」、§１３「石如」、§１８「�ｹ氏完白」
�ｂT５―５　冊頁（一六開）　隷書　「抑抑威儀維……」
〈款印〉§１４「家在龍山鳳水」、§１３「石如」、§１８「�ｹ氏完白」

５６歳（嘉慶３年、戊午、１７９８年）
�ｂT６―１　対幅　篆書七言　「山中避客編……」
〈款印〉§２０「鳳橋麟坂舊茅廬」、§２２「�ｹ石如字頑伯」、§２１「畫裏山樓」
�ｂT６―２　立幅　草書　「百尺偕攀豁……」
〈款印〉§１４「家在龍山鳳水」、§１８「�ｹ氏完白」、§２２「�ｹ石如字頑伯」

５７歳（嘉慶４年、己未、１７９９年）
�ｂT７―１　立幅　篆書『朱文公四齋銘』　「奠我徳性希……」
〈款印〉§１８「�ｹ氏完白」
�ｂT７―２　冊頁（九六頁）　四体書（篆・隷・楷・行草）
篆書（二四頁）　「萬緑陰中小……」
〈款印〉§２２「�ｹ石如字頑伯」、§２３「完白山人」
楷書（二四頁）　「司馬温公云……」
〈款印〉§１８「�ｹ氏完白」、§１５「日々湖山日日春」
隷書（二四頁）　「焚香看書人……」
〈款印〉§１８「�ｹ氏完白」、§１４「家在龍山鳳水」
行草書（二四頁）　「躊躇畦苑遊……」
〈款印〉§１８「�ｹ氏完白」、§２２「�ｹ石如字頑伯」

５８歳（嘉慶５年、庚申、１８００年）
�ｂT８―１　立幅　篆書　「龍虎之山靈……」
〈款印〉§１４「家在龍山鳳水」、§１８「�ｹ氏完白」、§２２「�ｹ石如字頑伯」
�ｂT８―２　横披　篆書『敬止堂』
〈款印〉§１８「�ｹ氏完白」、§２２「�ｹ石如字頑伯」
�ｂT８―３　五屏（六屏）　篆書『朱文公四齋銘』　「奠我徳性希……」
〈款印〉§１８「�ｹ氏完白」、§２２「�ｹ石如字頑伯」
�ｂT８―４　八屏　草書『登東嶽』　「岱秩巍巍秉……」
〈款印〉§１４「家在龍山鳳水」、§１８「�ｹ氏完白」、§２２「�ｹ石如字頑伯」

５９歳（嘉慶６年、辛酉、１８０１年）
�ｂT９―１　四屏　四体書（篆・隷・楷・草）
（第一幅）篆書　「隨意出南郭……」
〈款印〉§２７「�ｹ石如」、§２８「頑伯」、§２１「畫裏山樓」
（第二幅）隷書　「僕々長安道……」
〈款印〉§１５「日々湖山日日春」、§２４「鳳水漁長」、§２７「�ｹ石如」、§１４「家在龍山鳳水」
（第三幅）楷書　「懷袍屬不展……」
〈款印〉§２７「�ｹ石如」、§２８「頑伯」
（第四幅）草書　「楚山静寥廓……」
〈款印〉§２７「�ｹ石如」、§２５「龍山樵長」、§２６「具體而微」
�ｂT９―２　対幅　隷書七言　「甘露卿雲於……」
〈款印〉§２９「完白山人」、§２７「�ｹ石如」、§２８「頑伯」
�ｂT９―３　立幅　隷書　「霍去病志得……」
〈款印〉§２９「完白山人」、§２７「�ｹ石如」、§２８「頑伯」
�ｂT９―４　立幅　隷書　「絶照覽心圓……」
〈款印〉§２５「龍山樵長」、§２７「�ｹ石如」、§２８「頑伯」

６０歳（嘉慶７年、壬戌、１８０２年）
�ｂU０―１　立幅　行草書　「百尺偕攀豁……」
〈款印〉§２５「龍山樵長」、§２６「具體而微」、§２７「�ｹ石如」§２８「頑伯」
�ｂU０―２　横額（拓本）　隷書『集賢律院』
〈款印〉§２３「完白山人」
�ｂU０―３　立幅　隷書　「懷袍屬不展……」
〈款印〉§２６「具體而微」、§２７「�ｹ石如」、§２８「頑伯」
�ｂU０―４　八屏　隷書　「盧山東林法……」
〈款印〉§１９「笈遊道人」、§２０「鳳橋麟坂舊茅廬」、§３０「石如」、§２３「完白山人」
�ｂU０―５　立幅　行書　「風雪門封此……」
〈款印〉§２５「龍山樵長」、§２６「具體而微」、§２７「�ｹ石如」、§２８「頑伯」
�ｂU０―６　横披　隷書『崔子玉座右銘』　「無道人之短……」
〈款印〉§２０「鳳橋麟坂舊茅廬」、§１５「日々湖山日日春」、§３０「石如」、§２３「完白山人」

６１歳（嘉慶８年、癸亥、１８０３年）
�ｂU１―１　冊頁（拓本　二四頁）　篆書『般若心經』　「般若波羅蜜……」�@
〈款印〉§３０「石如」、§２３「完白山人」
�ｂU１―２　冊頁（尺牘　四開）　行書　「上樊大公祖……」
〈款印〉§３１「家在四靈山水間」
�ｂU１―３　四屏　隷書　「秋來漸次起……」
〈款印〉§２９「完白山人」、§１５「日々湖山日日春」、§２７「�ｹ石如」、§２８「頑伯」

�@本件は、『書道グラフ』第３８１号（近代書道研究所　１９８８）に拠り、冊頁（拓本　二四頁）　篆書『般若心經』と題した。近年、稿者の入手した原拓全套本により一行三字三二行を三段に刻していることを確認した。揚州（江蘇省江蘇県）平山堂の壁上に嵌入されている。

６２歳（嘉慶９年、甲子、１８０４年）
�ｂU２―１　立幅　隷書　「戰々慄々日……」
〈款印〉§２９「完白山人」、§３１「家在四靈山水間」、§２７「�ｹ石如」、§２８「頑伯」
�ｂU２―３　六屏　篆書『白氏草堂記』　「南抵石澗夾……」
〈款印〉§２０「鳳橋麟坂舊茅廬」、§３２「�ｹ石如字頑伯」、§２３「完白山人」
�ｂU２―４　対幅　草書七言　「開巻神游于……」
〈款印〉§３１「家在四靈山水間」、§３２「�ｹ石如字頑伯」、§２３「完白山人」
�ｂU２―５　対幅　草書五言　「海爲龍世界……」
〈款印〉§３１「家在四靈山水間」、§１５「日々湖山日日春」、§２７「�ｹ石如」、§２８「頑伯」
�ｂU２―６　対幅　隷書　「滄海日赤城……」
〈款印〉§２９「完白山人」、§３１「家在四靈山水間」、§１５「日々湖山日日春」、§２７「�ｹ石如」、§２８「頑伯」
�ｂU２―７　八屏（拓本）　篆書『管子』弟子職　「弟子職先生……」�@
〈款印〉§３０「石如」、§２３「完白山人」
�ｂU２―８　対幅　篆書四言　「龍跳天門虎……」
〈款印〉§１９「笈遊道人」、§１５「日々湖山日日春」　＊資料写真の不明瞭のため他３印判読できず。
�ｂU２―９　対幅　楷書七言　「不知明月爲……」
〈款印〉§２９「完白山人」、§２７「�ｹ石如」、§２８「頑伯」
�ｂU２―１０　対幅　隷書七言　「元龍未除湖……」
〈款印〉§２７「�ｹ石如」、§２３「完白山人」
�ｂU２―１１　立幅　行書　「握手更欣逢……」
〈款印〉§２９「完白山人」　＊資料写真の不明瞭のため他２印判読できず。�A

�@本件は、『�ｹ石如篆書弟子職』（西泠印社出版　１９８６）に拠り、冊頁（拓本　七七頁）篆書『管子』弟子職と題したが、稿者の入手した資料により八屏篆書であることが確認できたので題名を変更した。
�A中田勇次郎先生は、「�ｹ石如」印「頑伯」印を使用していると指摘（『書道藝術』１０　図版釈文・解説　中央公論社　１９７６）されるが、印影を明らかにしていない。

６３歳（嘉慶１０年、乙丑、１８０５年）
�ｂU３―１　六屏（拓本）　篆書　程頤『非禮勿言箴』　「伊川先生非……」
〈款印〉§２２「�ｹ石如字頑伯」
�ｂU３―２　六屏　隷書『周易』謙　「謙亨君子有……」
〈款印〉§２０「鳳橋麟坂舊茅廬」、§３２「�ｹ石如字頑伯」、§２３「完白山人」
�ｂU３―３　横披　篆書『念宛齋』
〈款印〉§２０「鳳橋麟坂舊茅廬」、§３２「�ｹ石如字頑伯」
�ｂU３―４　八屏（拓本）　隷書『張氏東銘』　「横渠張先生……」
〈款印〉§３０「石如」、§２３「完白山人」�@
�ｂU３―６　十屏　隷書『敖陶孫評』　「敖陶孫評魏……」
〈款印〉§２０「鳳橋麟坂舊茅廬」、§３３「佇中區以元覽」、§３２「�ｹ石如字頑伯」、§２３「完白山人」

�@印首印に「裁雲補衲之廬」印があるが、他の作品・印譜に見ないものである。





３．�ｹ石如自用款印
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　―２．�ｹ書における有紀年・有款印作品―において確認することができた自用款印３３印について、印影を集め―�ｹ石如自用款印�T・�U―とした。

　§３『石如』印・§５『�ｹ琰』印は、�ｂS０―１立幅楷書（東京国立博物館資料館保有写真資料）に拠る。
　§１６『�ｹ石如』印は、�ｂT５―１冊頁　四体書のうち篆書冊（東京国立博物館蔵品）に拠る。
　§１７『石如』印は、�ｂT５―１冊頁　四体書のうち隷書冊（東京国立博物館蔵品）に拠る。

　§１『�ｹ琰』印・§２『紫電青霜』印・§４『古浣子』印・§６『石如』印・§７『浮大白讀異書』印・§１１『字叔華』印・§２１『畫裏山樓』印・§２４『鳳水漁長』印・§２５『龍山樵長』印・§２６『具體而微』印・§３１『家在四靈山水間』印・§３２『�ｹ石如字頑伯』印・§３３『佇中區以元覽』印の印影については、『中国篆刻叢刊』第二二巻（二玄社　１９８４）より転載。


４．�ｹ自用款印の使用時期について
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　自用款印３３印それぞれについて使用作品を確認し、さらに作品の制作年から印の使用時期を確認する。
　これによって�ｹ書における自用款印３３印の使用時期を一覧表にしたものが、―資料�U　�ｹ石如書作品における自用款印と使用時期一覧―である。款印§�ｂﾍ使用の早いものから番号を付した。

§１『�ｹ琰』印（白文）
　姓名印。�ｹは初名を琰、字を石如といったが、仁宗嘉慶帝の即位（１７９６）に際して５４歳以後その諱（�]琰）を敬避して名を石如、字を頑伯に改めた。
　使用時期は、３９歳（２例）に使用が認められる。
�ｂR９―１　立幅　篆書『周易』謙　「天道虧盈而……」
�ｂR９―２　立幅　篆書『周易』説卦傳　「昔者聖人之……」

§２『紫電青霜』印（朱文）
　成語印。意は、節操の凛然としたさまをいう。王勃『滕王閣序』（『古文眞寳』後集　所収）の句�@。なお王句には「紫電清霜」とある。
　使用時期は、３９歳（１例）に使用が認められる。
�ｂR９―２　立幅　篆書『周易』説卦傳　「昔者聖人之……」

�@「騰蛟起鳳。孟學士之詞宗。紫電清霜。王將軍之武庫。」に拠る。

§３『石如』印（白文）
　字印。使用時期は、４０歳（１例）に使用が認められる。
　この印は�ｹの諸印譜に載せられず、ごく限られた期間に使用されたと思われる。また他の作品の押印例は―立幅　篆書『周易』謙（無紀年　§５・§３押印）―の１例のみである。
�ｂS０―１　立幅　楷書『楚辭』九歌のうち東皇太一・雲中君　「吉日兮良辰……」

§４『古浣子』印（朱文）
　号印。三十代の作品署名には古浣子・古浣が使われる。
　使用時期は、４６歳（１例）に使用が認められる。
�ｂS６―１　立幅　隷書　「歐陽永叔入……」

§５『�ｹ琰』印（白文）
　姓名印。使用時期は、４０歳（１例）・４６歳（１例）があり４０歳から４６歳に使用が認められる。
�ｂS０―１　立幅　楷書『楚辭』九歌のうち東皇太一・雲中君　「吉日兮良辰……」
�ｂS６―１　立幅　隷書　「歐陽永叔入……」

§６『石如』印（白文）
　字印。使用時期は、４０歳（１例）に使用が認められる。
�ｂS６―１　立幅　隷書　「歐陽永叔入……」

§７『浮大白讀異書』印（白文）
　成語印。意は、酒を飲みながら珍しい本を読むことをいう。大白は、罰杯に用いる大杯のこと。出典不詳。
　他の作品に押印例がなく、ごく限られた期間に使用されたと思われる。
　使用時期は、４６歳（１例）に使用が認められる。
�ｂS６―２　立幅　草書　「飛甍複閣厭……」

§８『�ｹ琰』印（白文）
　姓名印。使用時期は、４６歳（１例）・４７歳（１例）・４８歳（３例）があり４６歳から４８歳に使用が認められる。
�ｂS６―２　立幅　草書　「飛甍複閣厭……」
�ｂS７―１　冊頁（一四頁）　行書　「和大觀亭西……」
�ｂS８―１　四屏　篆書『湛方生序』　「湛方生序曰……」
�ｂS８―２　四屏　四体書（隷書）　「劉慧斐字宣……」
�ｂS８―２　四屏　四体書（行書）　「祁嘉字孔賓……」

§９『石如』印（白文）
　字印。使用時期は、４６歳（１例）・４７歳（１例）・４８歳（３例）があり４６歳から４８歳に使用が認められる。
�ｂS６―２　立幅　草書　「飛甍複閣厭……」
�ｂS７―１　冊頁（一四頁）　行書　「和大觀亭西……」
�ｂS８―１　四屏　篆書『湛方生序』　「湛方生序曰……」
�ｂS８―２　四屏　四体書（隷書）　「劉慧斐字宣……」
�ｂS８―２　四屏　四体書（行書）　「祁嘉字孔賓……」

§１０『�ｹ琰手摸魏晉以前金石文字之記』印（朱文）
　使用時期は、４８歳（３例）に使用が認められる。
�ｂS８―１　四屏　篆書『湛方生序』　「湛方生序曰……」
�ｂS８―２　四屏　四体書（篆書）　「周�s字巨勝……」
�ｂS８―２　四屏　四体書（楷書）　「周續之字道……」

§１１『字叔華』印（朱文）
　字印。�ｹの字には石如・叔華ほか拾餘・實愚・識漁がある�@。
　使用時期は、４８歳（１例）に使用が認められる。
�ｂS８―２　四屏　四体書（隷書）　「劉慧斐字宣……」

�@「�ｹ氏赤玉一字石如又字拾餘亦字實愚別字識漁」印（王爾度摸『古梅閣仿完白山人印賸』１８７２　所収）に拠る。

§１２『�ｹ琰』印（白文）
　姓名印。使用時期は、４９歳（２例）・５０歳（１例）・５１歳（１例）・５２歳（１例）・５３歳（２例）があり４９歳から５３歳に使用が認められる。
�ｂS９―１　四屏　篆書『程子四箴』　「程子四箴視……」
�ｂS９―２　四屏　篆書　「南陔孝子相……」
�ｂT０―１　立幅　隷書　「磯邊鵠去蘚……」
�ｂT１―１　立幅　草書　「到來忽評有……」
�ｂT２―１　対幅　隷書七言　「萬華盛處松……」
�ｂT３―１　立幅　草書　「江樓玉�z暗……」
�ｂT３―２　八屏　隷書『周易』謙　「謙享君子有……」

§１３『石如』印（朱文）
　号印。使用時期は、４９歳（２例）・５０歳（１例）・５１歳（１例）・５２歳（１例）・５３歳（２例）・５５歳（４例）があり４９歳から５５歳に使用が認められる。
�ｂS９―１　四屏　篆書『程子四箴』　「程子四箴視……」
�ｂS９―２　四屏　篆書　「南陔孝子相……」
�ｂT０―１　立幅　隷書　「磯邊鵠去蘚……」
�ｂT１―１　立幅　草書　「到來忽評有……」
�ｂT２―１　対幅　隷書七言　「萬華盛處松……」
�ｂT３―１　立幅　草書　「江樓玉�z暗……」
�ｂT３―２　八屏　隷書『周易』謙　「謙享君子有……」
�ｂT５―１　立幅　行草書　「懷抱屬不展……」
�ｂT５―２　冊頁　四体書（草書）　「擇故山濱水……」
�ｂT５―３　立幅　行草書　「清風江閣早……」
�ｂT５―５　冊頁　楷書　「抑々威儀維……」

§１４『家在龍山鳳水』印（朱文）
　住所印。�ｹは清の乾隆八年（１７４３）陰暦四月二九日、懐寧県（安徽省）集賢関外大龍山白麟坂に生れた�@。
　使用時期は、５０歳（１例）・５１歳（１例）・５２歳（１例）・５３歳（１例）・５５歳（３例）・５６歳（１例）・５７歳（１例）・５８歳（２例）・５９歳（１例）があり５０歳から５９歳に使用が認められる。
�ｂT０―１　立幅　隷書　「磯邊鵠去蘚……」
�ｂT１―１　立幅　草書　「到來忽評有……」
�ｂT２―１　対幅　隷書七言　「萬華盛處松……」
�ｂT３―１　立幅　草書　「江樓玉�z暗……」
�ｂT５―２　冊頁　四体書（隷書）　「少學琴書偶……」
�ｂT５―３　立幅　行草書　「清風江閣早……」
�ｂT５―５　冊頁　楷書　「抑々威儀維……」
�ｂT６―２　立幅　草書　「百尺偕攀豁……」
�ｂT７―２　冊頁　四体書（隷書）　「司馬温公云……」
�ｂT８―１　立幅　篆書　「龍虎之山靈……」
�ｂT８―４　八屏　草書『登東嶽』　「岱秩巍巍秉……」
�ｂT９―１　四屏　四体書（隷書）　「僕長安道陵……」

�@�ｹ光祖「�ｹ石如傳略」（光緒三十年重修『白麟�ｹ氏宗譜』　１９０４　所収）に拠る。

§１５『日々湖山日日春』印（朱文）
　成語印。意は、変わらない山水景勝の様子と永日の春ののどかさをいう。湖山は、ひろく山水のこと。出典不詳。
　使用時期は、５３歳（１例）５５歳（２例）・５７歳（１例）・５９歳（１例）・６０歳（１例）・６１歳（１例）・６２歳（３例）があり５３歳から６２歳に使用が認められる。
�ｂT３―２　八屏　隷書『周易』謙　「謙享君子有……」
�ｂT５―１　立幅　行草書　「懷抱屬不展……」
�ｂT５―２　冊頁　四体書（篆書）　「怪石長松嶒……」
�ｂT７―２　冊頁　四体書（楷書）　「焚香看書人……」
�ｂT９―１　四屏　四体書（隷書）　「僕長安道陵……」
�ｂU０―６　横披　隷書『崔子玉座右銘』　「無道人之短……」
�ｂU１―３　四屏　隷書　「秋來漸次起……」
�ｂU２―５　対幅　草書五言　「海爲龍世界……」
�ｂU２―６　対幅　隷書　「滄海日赤城……」
�ｂU２―８　対幅　篆書四言　「龍跳天門虎……」


§２１『畫裏山樓』印（朱文）
　楼号印。使用時期は、５６歳（１例）・５９歳（１例）があり５６歳から５９歳に使用が認められる。
�ｂT６―１　対幅　篆書七言　「山中避客編……」
�ｂT９―１　四屏　四体書（篆書）　「隨意出南郭……」

§２２『�ｹ石如字頑伯』印（白文）
　姓名字印。使用時期は、５６歳（２例）・５７歳（２例）・５８歳（４例）・６３歳（１例）があり５６歳から６３歳に使用が認められる。
�ｂT６―１　対幅　篆書七言　「山中避客編……」
�ｂT６―２　立幅　草書　「百尺偕攀豁……」
�ｂT７―２　冊頁　四体書（篆書）　「萬緑陰中小……」
�ｂT７―２　冊頁　四体書（行草書）　「躊躇畦苑遊……」
�ｂT８―１　立幅　篆書　「龍虎之山靈……」
�ｂT８―２　横披　篆書『敬止堂』
�ｂT８―３　五屏　篆書『朱文公四齋銘』　「奠我徳性希……」
�ｂT８―４　八屏　草書『登東嶽』　「岱秩巍巍秉……」
�ｂU３―１　六屏（拓本）　篆書　程頤『非禮勿言箴』　「伊川先生非……」

§２３『完白山人』印（朱文）
　別号印。§１８『�ｹ氏完白』印解説、参照。
　使用時期は、５７歳（１例）・６０歳（３例）・６１歳（１例）・６２歳（４例）・６３歳（３例）があり５７歳から６３歳に使用が認められる。
�ｂT７―２　冊頁　四体書（篆書）　「萬緑陰中小……」
�ｂU０―２　横額（拓本）　隷書『集賢律院』
�ｂU０―４　八屏　隷書　「盧山東林法……」
�ｂU０―６　横披　隷書『崔子玉座右銘』　「無道人之短……」
�ｂU１―１　冊頁（拓本）　篆書『般若波羅蜜多心經』　「般若波羅蜜……」
�ｂU２―３　六屏　篆書『白氏草堂記』　「南抵石潤夾……」
�ｂU２―４　対幅　草書七言　「開巻神游于……」
�ｂU２―７　八屏（拓本）　篆書『管子』弟子職　「弟子職先生……」
�ｂU２―１０　対幅　隷書七言　「元龍未除湖……」
�ｂU３―２　六屏　隷書『周易』謙　「謙亨君子有……」
�ｂU３―４　八屏（拓本）　隷書『張氏東銘』　「横渠張先生……」
�ｂU３―６　十屏　隷書『敖陶孫評』　「敖陶孫評魏……」

§２４『鳳水漁長』印（白文）
　別号印、出身の地名による。§１４『家在龍山鳳水』印解説、参照。
　使用時期は、５９歳（１例）に使用が認められる。
�ｂT９―１　四屏　四体書（隷書）　「僕長安道陵……」

§２５『龍山樵長』印（白文）
　別号印、出身の地名による。§１４『家在龍山鳳水』印解説、参照。
　使用時期は、５９歳（２例）・６０歳（２例）があり５９歳から６０歳に使用が認められる。
�ｂT９―１　四屏　四体書（草書）　「楚山静寥廓……」
�ｂT９―４　立幅　隷書　「絶照覽心圓……」
�ｂU０―１　立幅　草書　「百尺偕攀豁……」
�ｂU０―５　立幅　行書　「風雪門封此……」

§２６『具體而微』印（朱文）
　成語印。意は、体裁はそなえているが不十分であるこという。『孟子』（公孫丑　上）の語�@。
　使用時期は、５９歳（１例）・６０歳（３例）があり５９歳から６０歳に使用が認められる。
�ｂT９―１　四屏　四体書（草書）　「楚山静寥廓……」
�ｂU０―１　立幅　草書　「百尺偕攀豁……」
�ｂU０―３　立幅　隷書　「懷袍屬不展……」
�ｂU０―５　立幅　行書　「風雪門封此……」

�@「冉牛・閔氏・顏淵。則具體而微。」に拠る。

§２７『�ｹ石如』印（白文）
　姓名印。使用時期は、５９歳（７例）・６０歳（３例）・６１歳（１例）・６２歳（５例）があり５９歳から６２歳に使用が認められる。
�ｂT９―１　四屏　四体書（篆書）　「隨意出南郭……」
�ｂT９―１　四屏　四体書（隷書）　「僕長安道陵……」
�ｂT９―１　四屏　四体書（楷書）　「懷袍屬不展……」
�ｂT９―１　四屏　四体書（草書）　「楚山静寥廓……」
�ｂT９―２　対幅　隷書七言　「甘露卿雲於……」
�ｂT９―３　立幅　隷書　「霍去病志得……」
�ｂT９―４　立幅　隷書　「絶照覽心圓……」
�ｂU０―１　立幅　草書　「百尺偕攀豁……」
�ｂU０―３　立幅　隷書　「懷袍屬不展……」
�ｂU０―５　立幅　行書　「風雪門封此……」
�ｂU１―３　四屏　隷書　「秋來漸次起……」
�ｂU２―１　立幅　隷書　「戰々慄々日……」
�ｂU２―５　対幅　草書五言　「海爲龍世界……」
�ｂU２―６　対幅　隷書　「滄海日赤城……」
�ｂU２―９　対幅　楷書七言　「不知明月爲……」
�ｂU２―１０　対幅　隷書七言　「元龍未除湖……」

§２８『頑伯』印（白文）
　字印。使用時期は、５９歳（５例）・６０歳（３例）・６１歳（１例）・６２歳（４例）があり５９歳から６２歳に使用が認められる。
�ｂT９―１　四屏　四体書（篆書）　「隨意出南郭……」
�ｂT９―１　四屏　四体書（楷書）　「懷袍屬不展……」
�ｂT９―２　対幅　隷書七言　「甘露卿雲於……」
�ｂT９―３　立幅　隷書　「霍去病志得……」
�ｂT９―４　立幅　隷書　「絶照覽心圓……」
�ｂU０―１　立幅　草書　「百尺偕攀豁……」
�ｂU０―３　立幅　隷書　「懷袍屬不展……」
�ｂU０―５　立幅　行書　「風雪門封此……」
�ｂU１―３　四屏　隷書　「秋來漸次起……」
�ｂU２―１　立幅　隷書　「戰々慄々日……」
�ｂU２―５　対幅　草書五言　「海爲龍世界……」
�ｂU２―６　対幅　隷書　「滄海日赤城……」
�ｂU２―９　対幅　楷書七言　「不知明月爲……」

§２９『完白山人』印（白文）
　別号印。§２３『完白山人』印解説、参照。
　使用時期は、５９歳（２例）・６１歳（１例）・６２歳（４例）があり５９歳から６２歳に使用が認められる。
�ｂT９―２　対幅　隷書七言　「甘露卿雲於……」
�ｂT９―３　立幅　隷書　「霍去病志得……」
�ｂU１―３　四屏　隷書　「秋來漸次起……」
�ｂU２―１　立幅　隷書　「戰々慄々日……」
�ｂU２―６　対幅　隷書　「滄海日赤城……」
�ｂU２―９　対幅　楷書七言　「不知明月爲……」
�ｂU２―１１　立幅　行書　「握手更欣逢……」

§３０『石如』印（白文）
　名印。使用時期は、６０歳（２例）・６１歳（１例）・６２歳（１例）・６３歳（１例）があり６０歳から６３歳に使用が認められる。
�ｂU０―４　八屏　隷書　「盧山東林法……」
�ｂU０―６　横披　隷書『崔子玉座右銘』　「無道人之短……」
�ｂU１―１　冊頁（拓本）　篆書『般若波羅蜜多心經』　「般若波羅蜜……」
�ｂU２―７　八屏（拓本）　篆書『管子』弟子職　「弟子職先生……」
�ｂU３―４　八屏（拓本）　隷書『張氏東銘』　「横渠張先生……」

§３１『家在四靈山水間』（朱文）
　住所印。四霊は麟鳳亀龍をいう、出身の地名である懐寧県集賢関外大龍山白麟坂に因んだもの。
　使用時期は、６１歳（１例）・６２歳（４例）があり６１歳から６２歳に使用が認められる。
�ｂU１―２　冊頁（尺牘）　行書　「上樊大公祖……」
�ｂU２―１　立幅　隷書　「戰々慄々日……」
�ｂU２―４　対幅　草書七言　「開巻神游于……」
�ｂU２―５　対幅　草書五言　「海爲龍世界……」
�ｂU２―６　対幅　隷書　「滄海日赤城……」

§３２『�ｹ石如字頑伯』（白文）
　姓名号印。使用時期は、６２歳（２例）・６３歳（３例）があり６２歳から６３歳に使用が認められる。
�ｂU２―３　六屏　篆書『白氏草堂記』　「南抵石潤夾……」
�ｂU２―４　対幅　草書七言　「開巻神游于……」
�ｂU３―２　六屏　隷書『周易』謙　「謙亨君子有……」
�ｂU３―３　横披　篆書『念宛斎』
�ｂU３―６　十屏　隷書『敖陶孫評』　「敖陶孫評魏……」

§３３『佇中區以元覽』（白文）
　成語印。意は、心を奥深い処において万物を通見することをいう。陸機「文賦」（『文選』巻一七　所収）の句�@。原文は「佇中區以玄覽」とある、聖祖康煕帝の諱（玄�\）を敬避したもの。
　使用時期は、６３歳（１例）に使用が認められる。
�ｂU３―６　十屏　隷書『敖陶孫評』　「敖陶孫評魏……」

�@「佇中區以玄覽。頤情志於典憤」に拠る。


５．�ｹ自用印の使用時期についての検討
****************************************************************************************
　―資料�U　�ｹ石如書作品における自用款印と使用時期一覧表―について使用印の傾向を検討すると、大きく５期間を設定して論ずることできる。
　文中の�ｹ書有紀年の書法刻印については、―資料�T　�ｹ石如書作品の形態による分類―〈『�ｹ石如（有紀年）作品目録』（前同）　所収〉に拠る。

第１期　§１〜§３
　３９歳〜４０歳の使用であるが、作例が３件と非常に少ないので資料に乏しいが一応最初期のものとしておく。
　伝記資料は、このころの事情を次ぎのように記している。
・寿州にて梁�＝i前の巴東知県）に認められる。梁、�ｹを梅鏐（江寧の挙人）に紹介した（包世臣『完白山人傳』）。〈刻印作品から３８歳頃と考えられる。〉
・梅家に寄遇して援助を受ける。篆書碑９種を各百本を臨し、『説文解字』を二十本を写す。また、学書は三代の鐘鼎・秦漢の瓦当に及んだ。五年にして篆書を習得したのち、漢書碑８種を各五十本を臨すること三年にして隷書を習得した（前同）。
・梅家に滞在すること八年にして学書を完成させる。梅家の傾業とともに、梅家を離れた（前同）。〈３８歳〜４６歳頃〉
・歙県にて書を張惠言に認められ、張の紹介により金榜（歙の修撰）より賓客として礼をもって迎えられる。金家の諸書を揮毫し、一年のあいだ金に篆書を教えた（前同）。
・金、�ｹを曹文埴（太子太伝・戸部尚書）に推薦し、曹のために四体『千字文』横巻を揮毫した（前同）。〈金榜との交際は乾隆四七年（１７８２）４０歳の時。〉
　この期間は、有紀年の書法３件・刻印２件が確認され、特に３９歳は５件（書法３件・刻印２件）がある。梅鏐の家にあって篆書隷書を確立した時期に当たり、刻印に加えて篆書隷書に専念した。�ｹにおいて刻印と篆書隷書はもっとも評価される処である。
　３６歳から４１歳にかけては刻印１３件を確認することができ、生計を売印に依っていたことを事実として裏付けている。

第２期　§４〜§１１
　４６歳から４８歳の使用である。３年間中に８印が使われている。　伝記資料は、このころの事情を次ぎのように記している。
・乾隆５５年（１７９０　４８歳）乾隆帝の八十歳の聖誕にあたり、曹の要請によって上京する。都の劉�香i相国）陸錫熊（上海の左副都御史）より賞讃されるが、劉は失脚し、また陸が急逝した（包世臣『完白山人傳』）。
　梅家を離れ売書売印を業としたが、このころ文人としての評価も定まってきたようである。都（北京）での評価は褒貶半ばするが、文人としての名声は確立する。４６歳・４８歳に画家の羅聘との交流が知られる。
　この期間は、有紀年の書法８件・刻印６件が確認され、特に４６　歳は８件（書法２件・刻印６件）があり積極的に活動して第一の充実期である。伝記資料に書かれた梅家を離れ売書売印を業としたことを裏付けている。

第３期　§１２〜§１５
　４９歳から５３歳の使用である。５年間中に４印が使われている。第２期に比較して活動が停滞している。
　§１２はもっとも使用期間の長いもので５０歳から５９歳までの一〇年間にわたり使用が認められる。
　伝記資料は、このころの事情を次ぎのように記している。
・翁方綱（内閣学士）より挨拶がなかったことを理由に批判されたことから都を離れる。曹、�ｹを畢�O（兵部尚書・両湖総督）に紹介し、畢の幕客となった（包世臣『完白山人傳』）。〈書法作品から５０歳頃と考えられる�@〉
・辛壬の間（４９〜５０歳）、畢�Oの幕府で、孫雲桂と会う。（孫雲桂『完白山人傳』）
・畢のもとに居ること数年、辞去するに当たり畢より重金を与えられる。はじめて白麟坂に田宅を購入し、これを鐵研山房と言う。鉄研は畢�Oが鋳鏤したもので銘をなして贈品とした。（楊沂孫『完白山民傳』）
・三年ののち畢のもとを辞去する。畢、�ｹの老後のためとして土地住居を寄与した（包世臣『完白山人傳』）。
　この期間は、有紀年の書法８件が確認され、各年とも１〜２件であり活動の停滞期である。伝記資料に書かれた、畢�Oの幕客として多忙の時期と考えられる。

�@�ｂT１―２対幅　隷書八言は、畢�Oの署名があるが�ｹ５１歳の時の代筆によるもので幕客として任務に当たっている例証である。

第４期　§１６〜§２３
　５５歳から５８歳の使用である。４年間中に８印が使われている。第３期の停滞期を脱して、第二の充実期である。
　伝記資料は、このころの事情を次ぎのように記している。
・名の琰が嘉慶帝の諱と同じため敬避（１７９６）して、字の石如を名とし、字は頑伯とした。（包世臣『完白山人傳』）
　５４歳には�ｂT４―１対幅楷書・�ｂT４―２立幅（拓本）篆書があるが、款印のないものである。
　この期間は、有紀年の書法１２件・刻印２件が確認され、特に５５歳は８件（書法６件・刻印２件）があり積極的に活動してる。

第５期　§２４〜§３３
　５９歳から６３歳の使用である。５年間中に１０印が使われている。第４期に続いて、第三のもっとも充実期したである。
　伝記資料は、このころの事情を次ぎのように記している。
・嘉慶７年（１８０３　６０歳）包世臣と面晤して十余日を共に過ごし、�ｹ書を理解心服した（包世臣『完白山人傳』）。
・十月自宅で亡くなる。６３歳。（前同）
・嘉慶１０年（１８０５）６３歳、１０月４日自宅で亡くなった（�ｹ光祖「�ｹ石如傳略」）。
・�ｹの子の尚璽は幼少であった。�ｹ書は作品は多いが碑刻が少なかった。自宅には百軸があり、また別に百軸を懷寧の僧悟本に寄託した。李兆洛も各体の書二十幀を蔵していた（包世臣『完白山人傳』）。
　この期間は、有紀年の書法３２件・刻印２件が確認され、特に６２歳は１２件（書法１０件・刻印２件）があり生涯で頂点を示す活動期である。



６．結び
****************************************************************************************
　本稿は、研究の成果としては現時点のものであって、あくまでも今後の�ｹ書による款印使用の例により補充することが必要である。これによって使用時期が明らかになり、�ｹ書への研究も一層進むことと考えられる。
　今回の調査により、款印が明らかになった§１６『�ｹ石如』印また§１７『石如』印の印影を得たことは些かの成果であった。また、河井仙郎氏所蔵であった�ｂS０―１立幅楷書の款印資料を東京国立博物館資料館より偶然にも発見できたことは、�ｹ書の初期資料が非常に少ないだけに幸いであった。この立幅楷書の資料は、作品全体の写真資料はなく款印資料のみである。現在資料館には一八万件のモノクロ写真資料があるそうだが、立幅楷書の款印資料の原板番号が５００９であることは相当初期のものであると考えられ、こうした資料が活用できたことは何よりであった。

　本稿は、先賢諸氏の研究成果また資料提供を頂いた団体個人のご援助がなければ到底なしえないものであります。改めまして深謝申し上げます。
　本稿中の不備誤謬に付きましてはご指摘頂きますようお願い申し上げます。


参考文献
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―中文―
・『完白山人傳』　孫雲桂　（１７９２　『�ｹ石如法書選集』　所収）
・『藝舟雙輯』　包世臣　（１８３０頃　『近代中国史料叢刊』第３０輯　文海出版社　所収）
・『古梅閣仿完白山人印賸』　王爾度　（１８７２）
・『完白山民傳』　楊沂孫　（１８８１頃　『�ｹ石如印譜』　博雅斎　所収）
・光緒三十年重修『白麟�ｹ氏宗譜』　�ｹ光祖　（１９０４）
・『周易本義』　（１９７９）　台湾　東亜図書公司
・『�ｹ石如篆書弟子職』　（１９８６）　西泠印出版社
・『�ｹ石如研究資料』　穆孝天・許佳瓊　（１９８８）　人民美術出版

―日文―
・漢文体系２『古文眞寳』後集　（１９１０）　冨山房
・漢文体系２２『楚辭』　（１９１０）　冨山房
・『定本書道全集』１３　（１９５６）　河出書房
・『孟子集註』　（１９７３）　松雲書院
・『支那墨跡大成』８　（１９７４）　国書刊行会
・『文選』　（１９７４）　集英社
・『書道藝術』第１０巻　（１９７６）　中央公論社
・『款識叢例』　藤原楚水　（１９７９）　省心書房
・『中国篆刻叢刊』第２２巻　小林斗盦　（１９８４）　二玄社
・『書道グラフ』第３８１号　（１９８８）　近代書道研究所
・『�ｹ石如（有紀年）作品目録』　遠藤昌弘　（１９９８　『大東書道研究』７　大東文化大学書道研究所　所収）



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