�ｹ石如 年譜　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　文献資料には、『清史稿』508があり、『國朝先正事略』巻44、『國朝書畫家筆録』巻２、『國朝書人輯畧』巻６などの伝記があるが、いずれも�ｹ石如と同時期に活躍した人物たちによる孫雲桂『完白山人傳』、呉育『�ｹ石如傳』、包世臣『完白山人傳』、方履籛『�ｹ完白先生墓表』、李兆洛『石如�ｹ君墓志銘』、楊沂孫『完白山民傳』にもとづいたものである。ここでは孫雲桂『完白山人傳』、呉育『�ｹ石如傳』、包世臣『完白山人傳』、方履籛『�ｹ完白先生墓表』、李兆洛『石如�ｹ君墓志銘』、楊沂孫『完白山民傳』の伝記資料を検討し、編年できる記述について採用した。
　採用した文献の記載紀年や記載内容、また成立情況から、それぞれ孫雲桂『完白山人傳』は、乾隆57年（1792）に書かれた。呉育『�ｹ石如傳』は、嘉慶７年（1802）以後の数年に書かれた。包世臣『完白山人傳』は、嘉慶11年（1806）に書かれた。方履籛『�ｹ完白先生墓表』は、嘉慶20年（1815）に書かれた。李兆洛『石如�ｹ君墓志銘』は、道光５年（1825）以後の数年に書かれた。楊沂孫『完白山民傳』は、光緒７年（1881）以前に書かれたものと思われる。
　部分的に、穆孝天・許佳瓊『�ｹ石如年譜』（『�ｹ石如研究資料』所収　1988　人民美術出版社）を援用した。


乾隆８年　癸亥　（1743年）　１歳
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【文献】
・�ｹの先（祖先）は、國（�ｹは周代の国名、現在の河南省�ｹ縣）を以て氏とす。高密侯（�ｹ禹のこと。漢の時、高密侯の封ぜられた。）は、漢の宗臣たり。（李兆洛『石如�ｹ君墓誌銘』）
・その先（祖先）、江西鄱陽（江西省）より安慶府懷寧縣（安徽省）に遷り、君瑞（�ｹ君瑞）に至りて十三世なり。（李兆洛『石如�ｹ君墓誌銘』）
・陰暦４月29日（陽暦５月22日）、安徽省の懷寧縣の集賢關外代龍山西の白麟坂に生れる。（穆孝天・許佳瓊『研究資料』）
・安徽省の懷寧縣の集賢關の出身。姓は�ｹ、字は石如。名は琰。（包世臣『完白山人傳』）
・集賢關は皖公山下にあたる。そこで別号を完白山人といった。（包世臣『完白山人傳』）

乾隆16年　辛未　（1751年）　９歳
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【文献】
・父親の木齋にしたがって、塾中にあって読書した。（穆孝天・許佳瓊『研究資料』）

乾隆17年　壬申　（1752年）　10歳
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【文献】
・弟璹　が生まれた。家族が増え、家計が困難になった。学問を諦め、村の子供たちに随って、たきぎを集めた。（穆孝天・許佳瓊『研究資料』）

乾隆20年　乙亥　（1755年）　13歳
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【文献】
・年十三四、心窃窃として書を喜ぶ。（李兆洛『石如�ｹ君墓誌銘』）
・少くして孤悴に罹る。未だ誦習を專らにせず。梠を採りて市に入る。荊を編みて床を爲す。（方履鄱『�ｹ完白先生墓表』）
・貧しかったので、就学することができず、餅を売った稼ぎで粥を食べた。（穆孝天・許佳瓊『研究資料』）
・学問が好きだったので、長老らについて経書の句読を学んだ。（穆孝天・許佳瓊『研究資料』）

乾隆22年　丁丑　（1757年）　15歳
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【文献】
・篆刻を好み、常々に父親の木齋の篆刻と隷書を倣った。漢の印篆を倣って、たいへん上手くした。（穆孝天・許佳瓊『研究資料』）
・幼くして僻郷に生まれ、聞見するところ尠なかった。刻石を好み、漢人の印篆を倣ってたいへん上手くした。（包世臣『完白山人傳』）

乾隆24年　己卯　（1759年）　17歳
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【文献】
・冬のある日、瀟洒老人のために篆書『雪浪齋銘并序』を書いた。（穆孝天・許佳瓊『研究資料』）

乾隆25年　庚辰　（1760年）　18歳
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【文献】
・同じ村の潘容度の娘を妻とした。潘氏23才。（穆孝天・許佳瓊『研究資料』）

乾隆26年　辛巳　（1761年）　19歳
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【文献】
・祖父の士沅が死ぬ。祖父のために『内碑銘』を作る。（穆孝天・許佳瓊『研究資料』）

乾隆27年　壬午　（1762年）　20歳
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【文献】
・弱冠（20歳）にして、よく童子の師となる。生徒の　跳するを見れば、即ち舎て去る。（李兆洛『石如�ｹ君墓誌銘』）
・祖父（士沅）携えられて、壽州（安徽省壽州縣）に至る。すなわち已によく訓蒙す。（李兆洛『石如�ｹ君墓誌銘』）
・村の童子の先生になったが、生徒が飛び跳ねたので辞めた。（包世臣『完白山人傳』）

乾隆28年　癸未　（1763年）　21歳
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【文献】
・最初の妻の潘氏が死ぬ。（穆孝天・許佳瓊『研究資料』）

乾隆30年　乙酉　（1765年）　23歳
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【文献】
・寧國（安徽省）、九江（江西省）に行って、篆刻と書を売って生計とした。（穆孝天・許佳瓊『研究資料』）

乾隆37年　壬辰　（1772年）　30才
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【文献】
・始めて京師および各行省に遊ぶ。賢士大夫は石如が布衣であったので賎しんで相手にしなかった。（穆孝天・許佳瓊『研究資料』）

乾隆43年　戊戌　（1778年）　36才
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【作品】
・十月（10月）燈下、六カ月のあいだ濡須に滞在し、印『太羮玄酒』『聊浮遊以逍遥』（兩面印）を刻して、勉堂翁に持贈した。（��36−１）

乾隆44年　己亥　（1779年）　37才
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【作品】
・仲冬（11月）、葉天賜（詠亭）から七律詩一首對聯を贈られた。（穆孝天・許佳瓊『研究資料』）

乾隆45年　庚子　（1780年）　38才
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【文献】
・壽州に到る。梁巘（亳の人、まえの巴東の知県）は、壽春書院の主講であった。石如は、院中の諸生のために刻印して、また小篆をもって諸生の扇に書いた。（包世臣『完白山人傳』）
・梁巘の推薦により梅鏐の家（白門）に到る。六カ月滞在した。（包世臣『完白山人傳』）
・『石鼓文』、『嶧山碑』、『泰山刻石』、『漢開母石闕』、『燉煌太守碑』、『國山』、『天發神讖碑』、『城隍廟碑』、『三墳記』をそれぞれ百本を臨模した。（包世臣『完白山人傳』）
・篆体が不備であったので、『説文解字』二十本を手写して、半年にして畢る。（包世臣『完白山人傳』）
・三代の鐘鼎および秦漢の瓦當碑額を旁捜して、その書勢を縦しままにし、その趣を博くした。（包世臣『完白山人傳』）
・漢の八分書を学んだ。『史晨前後碑』、『華山碑』、『白石神君』、『張遷』、『校官』、『孔羨』、『受禪』、『大饗』をそれぞれ五十本を臨書した。秦相唐監書を臨模して、また一日に千里之効があった。（包世臣『完白山人傳』
【作品】
・五月（５月）、某文穆公（梅鏐）のために印『半千閣』を刻す。（��38−１）
・夏、第五鏐（梅鏐）のために印『清素堂』を刻す。（��38−２）
・秋、印『承學堂』『兩地青蹊』（両面印）を刻す。（��38−３）
・冬、印『蘭爲知己』を刻す。（��38−４）
・冬、邗上に遊び、始めて徐公威（丹徒の人）を知る。徐公威のために、印（印面欠、側款のみ）を刻す。（��38−５）
・冬、邗上で畢蘭泉と出会い、印を求められるが断わる。（��39−４）
・梅鏐より対聯（隷書「天球高朗一……」）を贈られる。

乾隆46年　辛丑　（1781年）　39才
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【作品】
・春二月二日（２月）立幅（篆書　臨〈李陽冰『周易』上經、謙〉「天道虧盈而……」）を書く。（��39−２）
・五月（５月）、立幅（篆書『周易』説卦傳　「昔者聖人之……」）を書く。（��39−２）
・五月（５月）、印『淫讀古文甘聞異言』（王充論衡語）を刻す。（��39−３）
・八月（８月）、畢蘭泉から家蔵舊搨の〈華陽眞逸の正書の『瘞鶴銘』〉を贈られる。廣陵の寒香僧舎において、南郡の畢蘭泉のために、印『意與古會』を刻す。（��39−４）
・穐（秋）、廣陵にいた畢蘭泉は、石如より印『意與古會』を贈られ銘を作る。「雷回紜紛。古奥渾芒。字追周鼎。碑肖禹王。秦與漢與。無與頡頏。上下千古。獨壇厥長。我爲鄭重。終焉允蔵。」また、石如に印に銘を刻すことを索める。（��39−４）

乾隆48年　癸卯　（1783年）　41歳
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【作品】
・九日（９月９日）、蘭泉先生（畢蘭泉）のために、印『筆歌墨舞』を刻す。（��41−４）
・菊月（９月）、京口に過客して、友の蘭泉居士（畢蘭泉）のために、蘇髯先生（蘇東坡）の『赤壁賦』の中の八字『江流有聲斷岸千尺』を刻す。（��41−１）
・九月（９月）、印『被名月兮佩寶璐駕青虯兮驂白螭』を刻す。（��41−２）
・秋末（９月）、京口に過客して、梅甫先生からの委嘱により、歐陽子（歐陽脩）の『秋聲賦』を補って、印『新篁補舊竹』を刻す。（��41−３）

乾隆51年　丙午　（1786年）　44歳
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【作品】
・穐（秋）、武林の汪氏の也園に過客する。この時、臨『會稽刻石』（篆書）を書く。（��44−１）
・歙県（安徽省）で、張惠言と遇う。この時、冊頁（隷書『司馬温公居家雜儀』二十條「文正司馬温……」）を書く。（��44−２）

乾隆52年　丁未　（1787年）　45歳
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【文献】
・４月23日酉時（午後６時）、父木齋卒す。時に六十有六。（穆孝天・許佳瓊『研究資料』）
・木齋先生歿す。既に葬すれば、君（�ｹ石如）袱被して越（浙江省）に入る。天臺（浙江省天臺縣）、雁蕩（浙江省樂清縣、平陽縣）に游び新安江に遵い、遍く黄山三十六峰を覽る。逆旅の中に金殿撰榜（金榜）と邂逅す。その書（�ｹ石如の書）を奇とすれば、館す。時に吾邑の張文皋先生（張惠言）、なお未だ遇わず。また金（金榜の家）に館すれば、一見して（�ｹ石如の書に）傾倒す。繼いでまた轉じて曹文敏公文植に客す。曹文敏公また書を以てこれを畢尚書沅に介す。（李兆洛『石如�ｹ君墓誌銘』）
・山人、梅氏に過客すること八年、學すでに成る。梅氏の家ますます匱しくして、またとは山人を客とするあたわず。山人すなわちまた前のごとく、草履擔簦して、あまねく名山水あそび、書刻をもって自給せり。（包世臣『完白山人傳』）
・山人、黄山（安徽省）にあそび歙（安徽省歙縣）至り、篆（篆刻）を賈肆にひさぐ。武進の編修の張惠言、歙の修撰の金榜の家に教授す。編修（張惠言）もとより深く秦篆をきわめ、修撰（金榜）の器とする所となる。編修（張惠言）山人書を市に見て、帰りて修撰（金榜）に語りて曰く、「今日、上蔡（李斯）の眞迹を見るを得る。」修撰（金榜）驚きて問ふに、語るに故をもってす。遂に雨を冒して偕に山人を市側の荒寺にいたる。修撰（金榜）即ち禮を備えて山人を客とす。（包世臣『完白山人傳』）
・歙（安徽省歙縣）の金修撰榜まさに家居す。生（�ｹ石如）その書を挾みて門に踵して上謁すれども、見るを得ず。書を市に賣る。翰林張先生（張惠言）時になお未第にして、金（金榜）の所に館す。出て生（�ｹ石如）の書を見れば、これを善くす。門者に謂て通す。�ｹ生、書を能くすと雖も、字を識らず、體（字體）に謬多し。張先生（張惠言）爲に六書の旨を討論すれば、生（�ｹ石如）大いに好くす。書を爲して益々放にして、雲行き風止む。（呉育『�ｹ石如傳』）
・修撰（金榜）家廟甚だ壯麗にして、其の楹は皆貞石なり、而して刻聯及び懸額は、修撰（金榜）の精心冩作なり。蓋し百易して後ちに定まる、謂うに此に能く加ふる莫きなり。山人の書を見るに及びて、即ち匠をあつめて其の額をけずる。しかれども石楹すでに豎く、磨治するに便ならざれば、屋をかけ楹をふして、山人に請てこれに書す、刻成りて乃ち重建す。其の傾服すること此に至れり。（包世臣『完白山人傳』）

乾隆53年　戊申　（1788年）　46歳
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【文献】
・山人年四十六にして、すなわち某を娶る、數年ならずして沒す、繼いで某を娶る。しかれども山人遊興して衰えず、つねに江淮の間を往來して、書を鬻ぎてもって旅費に給せり。（包世臣『完白山人傳』）
【作品】
・九秋（秋）、維揚寓廬において、立幅（隷書「歐陽永叔入……」）を書く。（��46−１）
・初冬（10月）、詠亭先生（葉天賜）の委嘱により印『我書意造本無法』（蘇東坡の句）を刻す（��46−３）
・初冬（10月）、朱草詩林主人のために、宋元法に倣って印『卻將八法冩湘君』を刻す。（��46−４）
・初冬（10月）、兩峯子（羅聘）のために、漢に倣って印『衆香之祖』を刻す。（��46−５）
・小春（10月）、兩峯子（羅聘）の委嘱により印『山中白雲』を刻し、羅兩峯の冩梅と交換する。（��46−６）
・初冬（10月）、邗上（江蘇省江都県）の寓廬において印『闕里孔子雩谷攷藏金石書畫之記』を刻す。（��46−７）
・仲冬（11月）、覺非盦主（頤堃）のために、印『覺非盦主』を刻す。（��46−８）
・長至後一日（12月）、京口（江蘇省鎭口縣）の樓に登り、蘭泉先生（畢蘭泉）のために立幅（草書「飛甍複閣厭……」）を書く。（��46−２）

乾隆54年　己酉　（1789年）　47歳
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【文献】
・山人、修撰（金榜）家に僑居す。編修（金榜）遂に山人に従いて篆法を受くること一年。（包世臣『完白山人傳』）
・修撰（金榜）、これを太子太傳戸部尚書の曹文敏公に称す。文敏（曹文敏）山人に請て四體『千字文』の横巻をなす、字大は徑寸にして、一日して成る。文敏（曹文敏）嘆絶して、白金五百をととのえて山人のために壽せり。（包世臣『完白山人傳』）
・曹竹墟尚書（曹文敏）、もっともこれを重んず。酒酣落墨して、その書を睨みて自贊して曰く「何か冰（李陽冰）斯（李斯）に讓らんや。」（孫雲桂『完白山人傳』）
【作品】
・長至後十日（12月）、瀟灑齋において「大觀亭の西泠女史の題壁ならびに序に和す」の詩を書く。

乾隆55年　庚戌　（1790年）　48歳
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【文献】
・乾隆庚戌の秋（８月13日）は、純廟（乾隆帝）の八旬の聖節なり。文敏（曹文敏）六月をもって都に入るに、山人に強いて同往せしむ。山人獨り草笠を戴きて、芒鞋をはき驢をむちうちて、文敏に後れること三日にして行く。（包世臣『完白山人傳』）
・文敏（曹文敏）の輿從、山東發水をもって傳じて後ち、山人と開山（湖南省）にあう。時の巡撫以下の命吏は、郊に文敏（曹文敏）を迎える。山人驢をむちうちて轅門を過ぎる。門者これを呵止す。文敏（曹文敏）堂上に座して、遥かに山人を見る、趨り出て廷入せしめ、上座を讓り、あまねく諸公に贊して曰く、「此れ江南の高士の�ｹ先生なり、其の四體書は、みな國朝第一となす。」諸公すなわち大いに驚きて、ために車從をととのう。文敏（曹文敏）曰、「吾先生に屈すること甚し、すなわち來都を肯ぜしも、ついに同行を肯ぜず。願くは諸公ともに先生の志を成さん。」ついに諸公を率いて山人を送りて轅門に至る。（山人）驢に上りて去れば、すなわち（曹文敏・諸公）入りて座に就く。（包世臣『完白山人傳』）
・時に都中の工書なる者、相國の劉文清公を推す、しかるに鑒別は則ち上海の左副都御史の陸錫熊を推す。山人都に至り、二公（劉文清・陸錫熊）山人の書を見て大いに驚きて、門に踵りて識面を求む、みな曰く、「千數百年この作無し。」山人ついに都中に留まる。（包世臣『完白山人傳』）
【作品】
・重九後二日（９月11日）、都門の寓廬において、四屏（篆書『湛方生序』「湛方生序曰……」）を書く。（��48−１）
・小春（10月）孟冬（11月）、都門の寓廬において、儷笙老兄のために、四屏〈四體書（篆書）「周勰字巨勝……」（隷書）「劉慧斐字宣……」（楷書）「周續之字道……」（行書）「祁嘉字孔賓……」〉を書く。（��48−２）

乾隆56年　辛亥　（1791年）　49歳
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【文献】
・いまだ幾ならずして、文清（劉文清）左遷して勢を失せり、しかして副憲（陸錫熊）憂をもってにわかに卒す。時に都中の篆分を作す者、みな内閣學士の翁方綱を宗とす。閣學（翁方綱）山人の其の門に至らざるをもって、すなわちつとめて山人を詆しる。耳食する者はともに其の説に和す。山人頓躓して都を出づ。文敏（曹文敏）ために治裝して、これを兵部尚書兩湖總督の畢沅に致す。尚書（畢沅）鑒賞をもって名家なり。しかれどもこの事においてまことに疎くして、よく山人を知らず。しかるに深くその高尚を器とす。時に呉中の知名の士おおく節署に集るに、裘馬すべて麗しくすれども、山人ひとり布衣にして徒歩なり。（包世臣『完白山人傳』）
・辛壬の間（1791〜1792）、武昌弇山尚書（畢沅）の幕府で、孫雲桂と会う。（孫雲桂『完白山人傳』）
【作品】
・春末（３月）、四屏（篆書『程子四箴』「程子四箴視……」）を書く。（��49−１)
・暮春月（３月）、維揚の寒香僧舎において四屏（篆書「南陔孝子相……」）を書く。（��49−２）

乾隆57年　壬子　（1792年）　50歳
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【文献】
・辛壬の間（1791〜1792）、武昌弇山尚書（畢沅）の幕府で、孫雲桂と会う。（孫雲桂『完白山人傳』）
・重九后八日（９月17日）、孫雲桂『完白山人傳』を著わす。（孫雲桂『完白山人傳』）
【作品】
・嘉平（12月）、龍山樵舎において、立幅（登黄鶴樓に登り、畢制府の詩韻に和す。隷書「磯邊鵠去蘚……」）を書く。（��50−１）

乾隆58年　癸丑　（1793年）　51歳
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【文献】
・曹文敏は、石如のために治裝して、石如を兵部尚書、兩湖總督の畢沅に致す。畢沅は、鑒賞をもって名家たり、しかしながらこの事まことに疎く。石如を知るあたわず。深く其高尚を器とするなり。時に呉中の知名士多く節署に集まる。裘馬すべて麗し、石如のみ獨り布衣にして徒歩す。（包世臣『完白山人傳』）
・嘗て巡撫の畢沅の幕府に游ぶ。名を知る所なし。（呉育『�ｹ石如傳』）
【作品】
・春雨兼旬（春）、立幅（たまたま友人の案頭において、牡丹數花を獲覩して、にわかに長句を賦す。草書「到來忽評有……」）を書いて、雲駒二兄先生に似めす。（��51−１）
・長至（12月）、畢沅（鎭洋の人、字は秋帆）の代りに、漢の『三公山碑』を適撫して、對幅（隷書「領迥山幽流……」）を書く。（��51−２）

乾隆59年　甲寅　（1794年）　52歳
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【文献】
・居ること三年にして辭歸せんとするに、尚書（畢沅）これを留むること可ならず。すなわち山人のために田宅を置て終老のために計る。しかして山人の行に觴して曰く、「山人は吾が幕府の一服の清涼散なり。今行けり。はなはだ減色をなす。」四坐漸沮せり。（包世臣『完白山人傳』）
・時に楚撫の畢公沅、士を愛す。曹公（曹文敏）爲に、これ（�ｹ石如）を致す。居ること歳餘。遍く衡湘の山水を覽て、厚贐を以て歸る。はじめて田宅を有し、居る所は北郷の白麟坂にして、これに題して鐵研山房と曰う。鐵研は、公（畢沅）鑄鏤する所にして、銘して贈と爲すなり。（楊沂孫『完白山民傳』）
・のちに文敏（曹文敏）病篤くして、その長子に語りて曰く、「吾すなわち逝かんとす、�ｹ山人かならず輓聯を有して至らん。汝すなわちもって吾が墓の華表および專祠前楹を勒さば、足れり。（包世臣『完白山人傳』）
【作品】
・秋日（秋）、對幅（隷書「萬華盛處松……」）を書く。（��52−１）

乾隆60年　乙卯　（1795年）　53歳
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【文献】
・石如は、居ること三年にして辭して歸える。畢沅は、石如を留めること可ならず。すなわち石如のために田宅を置て終老のために計る。石如の行くに觴して曰く、「石如は、我が幕府の一服清涼散なり。今行かんとす。はなはだ減色をなす。」四坐漸沮す。のちに曹文敏病篤くして、その長子に語りて曰く、「吾すなわち逝かんとす、�ｹ石如必ず輓聯の至あり、汝すなわち吾墓華表および專祠前楹を勒して足れり。」（包世臣『完白山人傳』）
【作品】
・秋、江北督學の査映山を黄門に送る。金陵の寓廬において立幅（草書「江樓玉篴暗……」）を書く。（��53−１）

嘉慶元年　丙辰　（1796年）　54歳
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【文献】
・嘉慶元年、名の琰が嘉慶帝の諱の顒琰と同じため敬避して、字の石如を名とし、字は頑伯とした。（包世臣『完白山人傳』）
【作品】
・春王、正月（１月）、鐡硯山房において對幅（楷書「滄海日赤城……」）を書く。（��54−１）
・仲冬（11月）、立幅（拓本　篆書「乾稱父坤稱……」）を書く。（��54−２）

嘉慶２年　丁巳　（1797年）　55歳
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【作品】
・新秋、秋七月望日（７月16日）、京江の江深草閣において冊頁（四體書　篆書「怪石長松嶒……」　隷書「少學琴書偶……」　楷書「雪齋清境發……」　草書「擇故山濱水……」）を書く。（��55−１）
・秋前二日（６月末）、京江の趙松侶とともに、凌江閣を過ぎ、立幅（行草書「清風江閣早……」）を書く。（��55−２）
・秋九月（９月）、京口の寓廬において印『心間神旺』を刻す。（��55−３）
・十月既望（10月16日）、醉墨軒において冊頁（隷書「抑抑威儀維……」）を書く。（��55−４）
・冬日（冬）、印『芍農』を刻す。

嘉慶３年　戊午　（1798年）　56歳
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【作品】
・秋、邗江において、英麗兄より、冊をもって書を索められる。近作を録して報いる。（��56−１）
・今冬（10月）、金陵の過客となり巣湖を過ぎ、笠人畫史と会って勉堂先生の近況を訊ねる。（��56−１）
・初冬（10月）、立幅（人とともに峻爽樓において晩眺すの作。草書「百尺偕攀豁……」）を書く。（��56−２）
・小春後一日（11月１日）、廿餘年まえに別れた勉堂先生のために對幅（篆書七言「山中避客編……」）を書く。石如は、目病になって、多く作ることができなかった。（��56−１）

嘉慶４年　己未　（1799年）　57歳
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【作品】
・夏、立幅（篆書『朱文公四齋銘』「奠我徳性希……」）を書く。（��57−１）
・孟冬月（11月）、肯園太老先生のために、韓江の寓廬（維揚の邸中、僧廬）において冊頁（朱韓山〈朱憙〉『座右編』數十條。四體書〈篆書「萬緑陰中小……」　隷書「司馬温公云……」　楷書「焚香看書人……」　行草書「躊躇畦苑遊……」〉）を書く。（��57−２）

嘉慶５年　庚申　（1800年）　58歳
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【作品】
・暮春（３月）、立幅（篆書「龍虎之山靈……」）を書く。（��58−１）
・清和月（４月）、横披（篆書『敬止堂』）を書く。（��58−２）
・清和月（４月）、韓江の寓廬において、五屏（篆書『朱文公四齋銘』　「奠我徳性希……」）を書く。（��58−３）
・孟卿大兄先生のために、八屏（草書『登東嶽』「岱秩巍巍秉……」）を書く。（��58−４）

嘉慶６年　辛酉　（1801年）　59歳
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【作品】
・首夏（４月）、集賢律院において養痾し、淑先親字先生のために四屏（四體書　篆書『遊王氏性園作』「隨意出南郭……」　隷書『徳州暑中贈王蓮湖使君』「僕々長安道……」　楷書『登任氏霄漢樓作』「懷袍屬不展……」　草書『題浙江泛月圖』「楚山靜寥廓……」）を書く。（��59−１）
・七月既望（７月16日）、　對幅（隷書七言「甘露卿雲於……」）を書く。（��59−２）
・仲冬（11月）、竹亭大兄のために、立幅（隷書「霍去病志得……」）を書いて贈る。（��59−３）
・嘉平廿四日（12月24日）、廣陵の是亦草堂において立幅（隷書『歸求草堂嚴氏所藏大朝鏡銘』「絶照覽心圓……」）を書く。（��59−４）

嘉慶７年　壬戌　（1802年）　60歳
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【文献】
・嘉慶七年、包世臣は、鎭江にて石如を識った。石如に従い過ごすこと十餘日、包世臣をもって能く真に石如の書を知るものとなせり。（包世臣『完白山人傳』）
【作品】
・孟春（２月）、廣陵の是亦草堂において立幅（行草書『庚申初冬、同人登皖城峻爽樓、晩眺作。』「百尺偕攀豁……」）を書く。（��60−１）
・春叔（３月末）、立幅（行書『辛酉仲冬晦前二日。夕前風霾。客子多驚以爲夜必雪也。燈下展石鼓巻。且読且摸。感而作此。』「風雪門封此……」）を書く。（��60−５）
・孟夏月（５月）、横額（拓本　隷書『集賢律院』）を書く。（��60−２）
・長至日（11月）、鳴吉將世長翁のために立幅（隷書『甲寅秋日。登霄漢樓作。』「懷袍屬不展……」）を書く。（��60−３）
・長至節（11月中）、横披（隷書『崔子玉座右銘』「無道人之短……」）を書く。（��60−６）
・嘉平月（12月）、□□泉のために、八屏（隷書「盧山東林法……」）を書く。（��60−４）

嘉慶８年　癸亥　（1803年）　61歳
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【文献】
・（包世臣）また揚州にて値えり。石如、太山之遊をなせり。（包世臣『完白山人傳』）
【作品】
・元月（１月）、册頁（拓本　篆書『般若波羅蜜多心經』「般若波羅蜜……」）を薫沐敬書する。（��61−１）
・花朝後五日（２月20日）、册頁（尺牘　行書「上樊大公祖……」）を書く。（��61−２）
・秋、寄蓮莊四兄親家のために四屏（隷書『有白門之遊。適大雷令師茘扉明府。重�n望江、停舟過僧廬、訪余。清話半日。越旬舟中、作此。』「秋來漸次起……」を書く。（��61−３）

嘉慶９年　甲子　（1804年）　62歳
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【文献】
・九年の秋に至る、石如、山東より常州に至る。揚を過ぐるに入城せず。（包世臣『完白山人傳』）
・十一月杪におよんで、陽湖の今の鳳臺知懸の李兆洛（申耆）に晤う、始めて包世臣と張翰風が揚州に同客せしを知る。張翰風は張恵言の弟なり、包世臣も、始めて石如の名を張翰風より聞く。時に石如は、家書を得て里に帰ることを促されり。すなわち舟を買って揚州を回る。包世臣を天心�Pに訪ねる。しかれども包世臣たまたま東臺にゆく。（包世臣『完白山人傳』）
・石如、包世臣を俟ちて十二月初八に至る。すなわち張翰風に語りて曰く、「歳盡きんとす、家を去ることなお千里、吾ついに包世臣を待つに及ばず。」ついに纜を解く。石如、里に帰りて、またとは出遊せず。（包世臣『完白山人傳』）
【作品】
・麦秋（４月）、韓江の寓廬において立幅（隷書『古銘』「戰々慄々日……」）を書く。（��62−１）
・小春（10月）、文太史の法を用いて、印『燭湖孫氏』を刻す。（��62−２）
・蒲節後一日（５月６日）、仲甫先生のために六屏（篆書『白氏草堂記』「南抵石澗夾……」）を書奉する。
・蒲月下澣（５月下旬）、對幅（草書七言「開巻神游于……」）を書く。（��62−４）
・夏、對幅（草書五言『寓興嚴佛廬。遇靈隱見初禪友。行游於此、往來旬月。見其行、持脩潔。頗志於書學、有永禪師風。因樂與之遊。今將歸虎林。書此十字、以贈其行。』「海爲龍世界……」）を書く。（��62−５）
・秋中節（８月15日）、後甫五兄のために、任城の碧山書屋において、對幅（隷書「滄海日赤城……」）を書く。（��62−６）
・長至（11月中）、海門髯翁のために、澄江の寓廬に過宿して、對幅（篆書四言「龍跳天門虎……」）を書いて贈る。観書したものに祝貳璇、夏循院、祝之常がいた。（��62−８）
・長至（11月中）、五初のために、枕芸書屋において對幅（楷書七言「不知明月爲……」を書いて贈る。（��62−９）
・十有一月丙戌朔、粤十有八日癸卯（11月18日）、辨志書塾において册頁（篆書『管子』弟子職　「弟子職先生……」）を書く。（��62−７）
・仲冬下澣（11月下旬）、武進の張翰風の依嘱により、心盦髯翁壇長のために對幅（隷書七言『長洲胡元謹集句』「元龍未除湖……」）を書く。（��62−10）
・冬、岸夫竹書大兄のために、立幅（行書『自東遊還、過京口。於袁岸夫座上。喜晤胡黄海、即歩其韻。』「握手更欣逢……」）を書いて贈る。（��62−11）

嘉慶10年　乙丑　（1805年）　63歳
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【文献】
・石如、十月家に卒す、年六十有三歳。（包世臣『完白山人傳』）
・先生（�ｹ石如）、嘉慶十年に卒す。年六十有七。（方履籛『�ｹ完白先生墓表』）
・子の尚璽なお幼。石如書、至夥なるも、碑刻少なし。書ありて百軸家に存せり、また百軸ありて懷寧の僧悟本に付す。聞くに悟本これを守ること、はなはだ愼む。李申耆もまた石如の各體書の精良もの二十幀を蔵し、石に勒してもってその傳を永せんとすることを議せり。（包世臣『完白山人傳』）
【作品】
・華朝（２月15日）、雷陽の書齋の小停雲館において、六屏（篆書　程伊川『非禮勿言箴』「伊川先生非……」を書く。（��63−１）
・天中節（５月５日）、六屏（隷書『易經』謙卦「謙亨君子有……」）を書く。（��63−２）
・夏五（５月）、横披（篆書『念宛齋』）を書く。（��63−３）
・六月六日（６月６日）、皖口の裁雲補納之廬の紫竹山林において八屏（拓本　　隷書『張氏東銘』「横渠張先生……」）を敬書する。（��63−４）
・龝九月（９月）、石碑（拓本　隷書『��懸學宮禮器碑』　篆額「朱新園捐鑄祭器之碑」　碑文「��懸學宮禮……」）を書く。（��63−５）
・十屏（隷書『敖陶孫評』　「敖陶孫評魏……」）を書く。



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